3. 博多湾の環境特性
博多湾は、水域約13,400ha(内、博多港は約8,300ha)を有し、湾口部が狭く波も穏やかで水深は平均7mと浅い閉鎖性水域の湾である。
そのため、外海水との交換が遅く、陸域からの流入物質が蓄積されやすくなっている。
近年の都市化の進展とともに、他の閉鎖性水域でみられるような水・底質環境の悪化が懸念されており、水質汚濁に関する環境基準は、西部海域A類型、中部海域A類型、東部海域B類型となっている。
水質は、中部海域から東部海域にかけて湾奥部にいくに従い汚濁の傾向が高く、底質に関しても、中部海域から東部海域にかけて汚濁傾向が高くなっている。
景観面からは、博多湾は玄海国定公園に指定されている志賀島や海の中道の砂州、糸島半島などで囲まれており、自然のままの囲繞空間である。また、どこからでも対岸が眺められることが特徴的であるとともに、湾から陸側を眺めると、背振山を中心とした稜線が緑豊かであり、自然性の高い落ち着いた雰囲気を持っている。
海岸線については、自然海岸、半自然海岸、人工海岸がそれぞれ1/3を占めるなど、大都市に隣接する海岸としては、非常に自然が豊かであり、今津・和白・多々良川河口などの干潟には多くの野鳥が飛来している。
Pic−1 The Iandscape of Ecopark Zone
4. 博多港のエコポートモデル事業
博多港の港湾環境整備は、小戸地区の公園・緑地の整備をはじめとして、地行・百地・姪浜地区における背後緑地と一体となった人工海浜の整備、生の松原地区の砂浜と松林にとけ込んだ海岸の整備など、主に博多港の西部地域を中心に進めてきている。
その結果、西部地区のパブリックアクセスはほぼ全域で良好となり、また、親水拠点となる施設も多く整備されてきた。
一方、博多港最東部に位置する和白地区(エコパークゾーン)は、他の水域と比較して水・底質の悪化が懸念されているものの、干潟や砂浜、岩礁といった自然海岸が多く残され、水生生物や鳥類など豊かな生態系が形成されている(Pic−1)。
こうした良好な自然異境が多く残されている反面、海浜へのパブリックアクセスは十分とはいえず、また、親水拠点となる施設もほとんどないのが現状であり、かねてから整備の要請が高い地域となっている。
1987年(昭和62年)当時の港湾計画では、陸続きに和白地区を埋立てる計画であったが、豊かな自然を保全する観点から、既存海岸線前面の海域を残した島形式の埋立計画(アイランドシティ)に変更した(Fig−3)。
和白干潟を含む約550haのエコパークゾーンにおいて、港湾環境インフラの重点的整備を行うことにより、干潟をはじめとする自然異境の保全と創造が図られるばかりでなく、多くの市民が自然に触れ、親しむことを日指し、エコポートモデル事業の実施を図るものである。
Fig−3 The change of reclaimed land plan
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